家の空間について

この家の空間について」は、家のデザインに新しいアプローチを示し、推奨される新しい最小の規格を提示したもので、1972年再版された英国政府刊行物発行所より発行されたものです。日本での家を検討する方のために、少しでも役に立てばと想いホームページに日本語訳をのせてみました。国柄の慣習、習慣の違いや時代背景等に多少違和感がありますが、原書を基本的には忠実に訳しております。是非参考にしてみてください。

序章

家 をデザインするということが誰にでもできるという考えには,全く根拠がない。それは建築の分野で最も困難なことだ。この家の空間については、家のデザイン に新しいアプローチを示し、推奨される新しい最小の規格を提示したものです。「家の空間について」が示すことは大きく3つのことになります。

  • 家のデザインのために必要な、家族や人の活動をイラストで示す
  • 提示された活動に必要な空間と、活動に要する家具にすぐにアクセスできる形態を示す
  • 規格の例証の分析実例を示す

こ のレポートは,人々が家でする活動,様々なやり方でする活動に関してのものである。デザインの問題に対するこのアプローチは,これらの活動に対するはっき りした認識から始まり,社会,家族,個人の生活の重要性に関わり,空間,雰囲気,効率、快適さ,家具と備品の必要性の評価へと続き,空間と共に活動の頻繁 さや時間と状況を考慮して、活動を編成したり、同時にできない活動を分けたりすることへと続く。このようなアプローチは、様々な想定,つまり、寝ること, 着替えること、衛生に要することに充てる床面積は平等であるべき、あるいは他のニーズは全てまとめて考えるべき,または家はできるだけ一階より二階建てが よい,などという想定に答えつつ、状況に応じて可変性である。アプローチはまた間接的なものである。配置や部屋は結果であり,出発点ではない。配置は立地 の条件や建築の可能性、コストによって限界があったり満足されられたりするニーズに関連して決まり,部屋はニーズのために作られるもので、かってなものの コピーではなく,熟考の結果導きだされるものである。

部屋が役立つものであるかは、その形,適切な家具の配置ができる ようなドアや窓の位置による。部屋が住むのに快適で暮らしやすいか知るためには,家具が空間に適合するサイズ、理にかなった設置方法かということと共に, なおかつ快適で使いやすい空間が残されるかということも確認しなくてはならない。つまり、部屋のデザインに対する正しいアプローチとは、まずどのような活 動がなされるのか知ること,そしてその活動に必要な家具や備品を考えること,そして、外観や装飾、家の他の場所との連絡などの他の重要なニーズを踏まえて デザインすることである。部屋でどのような活動がなされるかは住人の生活様式、暖房方法と、他にどのような部屋が想定されるかによる。

家 の設計図には標準的なものがいくつもあるが,そのうちの一つを採用することは,建築家を頼む利点の半分を失うことである。仕事の半分しかなされないという ことに加え,建築家の仕事の範囲を狭め,設計を新しく,役立つものに発展させる機会を失うことでもある。従って,我々は特定のプランや部屋の寸法を主張し たりしない。建築家の信念同様,居住者がしたいと思う活動への注意の集中によって家の基準は決まり,部屋や家事室の数で決まるものではない。このアプローチは住宅に関わる建築家の創造的エネルギーがより大きく発揮されるようにするためにきわめて重要なものだと考えるので,基準について表現するときに、このことは最大限気を付けた。

建 築家にどう家をデザインするかを教えてくれる研究などない。それは、特に、よくあるように限られた小さな居住空間を扱うときは、解決すべきたくさんの問題 を抱える創造的な仕事である。その仕事がどれだけ成功するかは,仕事に関わる全ての人が、家がうまく運営されるために必要な活動と、そのためのニーズを理 解するための方法と手段をどれだけ持っているかによる。この分野では,今まで数少ないリポートしか発行されていなかった。この冊子に続いて新しい関連分野 のレポートが発行されることを望む

デザインの背景

顧 客から提供される指示に加えて,デザイナーは自身のデザインのコンセプトを作り上げなくてはならない。この章ではデザイナーが準備段階で熟考すべきトピッ クを扱う。まず、家の中での個人やグループの様々な活動を挙げ、分類し,空間の使い方を考える。次に活動の時間と場所を考え,家族の成長に伴う変化を考え る。個人と家族の要求とともに,デザインに影響する時代や経済状況も視野に入れる。最後に,家を取り巻く環境も考えなくてはならない。家への出入りやレイ アウトに大きく関わる問題である。

家での活動の種類

家 をデザインするには、家での主な活動を意識することから始まる。家族は始終出入りする。客が来る。主婦の仕事、掃除、洗い物,料理、育児,や、TV、友人 の接待などでは人は一カ所に集まり,宿題や,趣味はバラバラにやる。身繕いや衛生,家の装飾やガーデニング、洗車なども考えなくてはならない。これらを考 えることは、デザイナーが仕事を進めるための出発点になり,人によって違う家事活動を、依頼者のために査定する助けになる。さらに、家はただ活動する場所 ではなく,休息や余暇を楽しく過ごしす場でもあり,子どもが育つのに、魅力的で快適な場所であるべきということも,忘れてはならない。

活動の分類

デ ザイナーが機能要求に対してプランを発展させるために、特定の家の骨組みのなかで、活動がどう分類されるか考えるべきである。そうすることでデザインの限 界が分かり,特に小さい家では妥協も必要になるが,妥協は活動を侵害する最小の物にする配慮が必要である。違う場所での活動をどう分類するか考えるには、 主要な活動か、時々にしかしないことかで分けるとよい。それが居住空間をどう分けるかに関わる。たいていはある特定の活動は特定の場所で行われる。主要な 活動(例えばTVを観ること)はたいてい複数名でするので、居間は「うるさい場所」になる。たまの活動(宿題や縫い物)は、静かである。しかし、「うるさ い活動」と「静かな活動」はときに同時に行われるので,両方が同時にうまくいくよう設計しなくてはならない。様々なやり方があるが,可能なら食事の場所を 別にすることでそこを静かな活動に使えるし,ダイニングでうるさい活動をし,リビングを静かな活動にあててもよい。もしダイニングと台所が一緒なら,寝室 のどれかを静かな活動に使える。このようばことが寝室をどこにどう設け,暖房や家具の配置をどうするかというデザインに関わる。活動の評価にはまた、「整 頓」か「ちらかし」ということも必要である。どの活動も乱雑さを引き起こすが、特に小さい子どもの食事、世話は散らかる。小さな台所ではダイニングやリビ ングでもちらかしが起きるが,食事の場所がリビングから離れていれば,ちらかしは一カ所ですむ。また、広い台所では母親の目の届く場所で子どもが遊べる。 こ れらはデザイナーが考慮すべき活動の分類の例である。家族や地域の習慣,生活のパターンによってまた分類法は異なる。

活動の時間、場所

図1と2では段階の違う二つの家族の生活時間帯を示した。また場所と動きのパターン、家の使われ方で強調すべき点も示した。家族の暮らし方によって強調する点は違うが,デザイナーの参考としてこのような例の分析は有効である。

図1:若い家族〔両親、7歳の児童(男)3歳と1歳(女)〕

07:00  朝の忙しい時間、お湯、急速暖房が必要。

07:10  朝食はすぐに供されるべき。学童は支度をし,他の子どもたちを起こす。

08:30  父親と学童が家を出る。母親は下の子どもたちに食事をさせ,自分も食べる。家事をする所の近くで食事をする場所があるとよい。

09:30  母親は赤ちゃんを乳母車に乗せ,幼児は外で遊ぶ。幼児は家を出たり入ったりする。母親は家事をしながら子どもたちを観ていることが必要。

11:30  買い物から帰る。乳母車と買った物を置く場所,子どもの上着を脱がせる場所の余裕と,それを置く便利な場所が必要。

12:00  子どもが家の中で遊ぶ間,母親は台所から子どもたちを見ている必要がある。しかし、子ども達は台所設備や母親の足下からは離れていなければならない。

12:30  平日、家族が食事に帰ってくるときは,すぐに手を洗い食べなくてはならない。食事の場所は仕事の中心からすぐ近くだと便利。

14:30  赤ちゃんには静かな昼寝場所が必要。幼児にはおもちゃ、道具が集まっている場所が必要。そうすれば母親の片付けが楽。

15:30  訪問客のために,整頓された場所が必要。双方の子ども達が大人の目の届く所ではあるが、お茶のテーブルからは離れている場所で遊ぶ。

17:00  TVを観ることは家族の重要な活動。子ども達もリビングルームで一緒に観る。

18:00  もし食事をしながらTVを観たいのであれば,低いテーブルを置く場所がいる。

18:30  TVがついていても観たくなく、静かに座る場所が必要な人がいる時もある。子どもを寝かせるには静けさが必要。

19:00  父親が何か直したり作ったりするとき,母親の台所での動きを邪魔せずに,子ども達の眠りを妨げないことが必要。

20:00  時には子どもが好きなTV番組を見ている間、訪問客をもてなすこともある。

22:00  母親は客にスナックを作りながらおしゃべりしたい。

23:30  両親は、すぐそばにいけるように、小さい子ども達の近くに寝ることが必要。

図2 より年長の家族〔両親(母親はパート)、23歳の男、20歳の女、14歳の男〕

07:00  働いている4人と中学生が顔を洗う。2つのトイレと洗面所が必要。お湯と暖房は必須。

07:30  皆が必要な物を持って出かけるまで,台所周辺は大混雑。サンドイッチを切ったりお弁当をつめたり朝ご飯を食べたりする。

08:30  留守中にパンや牛乳、小包やクリーニングの配達がきて荷物を安全な所に置く。

16:30  

18:30  夕食時だけ家族が全員そろう。台所からはなれた所で食事したい。

20:00  家族はそれぞれ別の活動をする。それぞれに場所が必要。

21:00  時には家族はいくつかのグループに分かれる。子ども達はそれぞれ自分の友達をもてなす。一つ以上のグループに部屋とプライバシーがいる。

22:30  寝る前に明日の準備をしたりスナックを食べる。何人かが雑用をする場所が必要

23:30  思春期に達した子ども達には独立した寝室が必要。両親のそばである必要なし。

家族の成長

ほ とんどの家族は時が経つにつれ拡大し,また縮小する。それは家をデザインするのに大切な要素である。それぞれの段階でニーズが違う。段階により家を変える ことはできないので,一つの家の空間の使い方を変えて対処するしかない。図3、4、5では、典型的家族サイクルを示した。例えば子ども3人の家族は、家族 が二人の時が9年間,三人が11年,四人が9年,五人が15年ある。この家族が最初の子どもが生まれた後に引っ越をし、最後の子どもが家を出るまで住むと すると、最大の五人の時期は居住期間の半分以下である。これらの事実、少なくても9年間は赤ちゃんがいて、最低一人は就学前の子どもがいる時期が13年 間,朝、四人が同時に学校や仕事に行く支度をする時期が約10年間あるということは、家のデザインに関わる。家族のサイズの変化に加え,生活も変化する。 若いカップルと子ども一人のときなど、家族が共に過ごすのを好む時期がある。子どもが小さいときは目の届く遊び場が必要だが,また子どもから離れる場所も 両親には時には必要だろう。子どもがもっと大きくなれば,個々のプライバシー、個室が必要になる。つまり寝る場所と居住空間はフレキシブルであるべきであ る。子ども達は部屋を共有するか個室に分かれるか,リビングは皆に開かれた空間か個室から閉ざされているか、変えられるべきである。最大サイズになる前か 後には余分な空間は、家族が最大になった時は居住スペースとして、あるいは時には寝室として適当に使われるようにする。

家族の発展デザインで考慮すべきこと

図3:子ども二人の家族(上が女,下が男)

子どもが3歳以下の期間:6年
子どもが5歳以下の 期間:9年半
十代の期間  :11年半
最低三人が仕事や学校に行く期間:14年
夫婦二人だけの期間:12年

図4:子ども三人の家族(上が女,下二人が男)

子どもが3歳以下の期間:9年
子どもが5歳以下の 期間:13年
十代の期間  :15年半
最低四人が仕事や学校に行く期間:15年半
夫婦二人だけの期間:8年

図5 :子ども四人の家族(一番上と三番目が女,他二人が男)

子どもが3歳以下の期間:11年
子どもが5歳以下の 期間:16年
十代の期間  :17年半
最低五人が仕事や学校に行く期間:8年

外的環境

家 のプランの詳細を考えるときは家族の暮らす社会の性質は常に念頭に置かねばならない。今現在の社会と経済の変化、もう一方で将来の傾向という背景と共にデ ザインの問題はある。第二次大戦後の変化では、完全雇用がほとんど全ての家庭に確実な給料をもたらし,結婚している女性の三分の一以上は働いている。消費 支出は三分の一増え家のデザインに大きく影響している。子どもが教育を受ける期間は長くなり,また職業形態も変わり,非肉体労働者が増えている。消費支出 の大幅な増大は,家具の調達,家の装飾と設備に大きく貢献した。五分の四の家族がTVを持ち,五分の二以上が冷蔵庫を持ち,半分以上が洗濯機を持ち,五分 の一がステレオを持つ。掃除機,床磨き機,乾燥機,テープレコーダーなどはもうじき一般的になるだろう。食器洗い機や冷凍庫などがまた先に待っている。自 動車の所有も大きく伸び,じきに自動車を持っていない方が珍しくなるだろう。車とより多くのの器具類は家のデザインをするために考慮に入れるべきものであ る。 これらのものを無視することは,最近のニーズに答えることに失敗することであり,将来の生活様式でのスペースを用意することができなくなることである。次 の25年に起こりうる生活の基準の向上は、住宅の基準に大きなインパクトを与えるだろう。恵まれた一部の人の熱望の対象は,徐々に地域のひと全体のものと なるだろう。労働時間はだんだん短くなり,余暇が増え,人々は様々な休息やリクリエーションを求めるだろう。自由な時間が増えるにつれ家族が集まってする 活動が増えるので、家の空間に新しい要求がでてくるだろう。家事はより機械化される。便利さを求めて収入のうちのより多くが家に費やされるだろう。これら の社会的、経済的環境の発展は,家族の活動と住宅のニーズの研究に不可欠のものである。デザイナーがこれらのことを意識することは,デザインの問題に関わ るのに必要なことである。

活動の空間

家のデザインとレイアウトに役立つ様々な寸法のデータを示した。活動に最適なサイズと形の空間を発展させるのに使える。

A 活動

食事の支度

食事

ゴミ捨て

レジャー

睡眠

身支度

移動

出入り

B 家具と設備のサイズ

C プランの評価のために推奨する家具の一覧表

図の寸法は家具,備品器具類に必要な空間、使い手が必要とする隣接空間の寸法を示す。図6から図41の家具,備品器具類のサイズは図42から図99に別に 示されている。ときにはデザイナーはプランの別の箇所を優先するためか、あるいはサイズの限界のためにここに示されているより小さい寸法を採用するかもし れない。ここでの寸法はデザインの出発点になるものである。以下四つのタイプの寸法が図に含まれる。

  • 家具のサイズ
  • 家具か人と、隣接した壁またはテーブルトップより高い家具との間の寸法
  • 家具か人と、 隣接したテーブルトップより低い家具との間の寸法は*
  • 家具か人と、 隣接した椅子より低い家具との間の寸法は+



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